08/SEP/2000 UP


  声優・三木眞一郎へのオマージュ  



フォト<三木ちゃま・ヨージ1(レトロ調ひび)>
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ある殺し屋の鍵



夜明け前が一番闇いのだという。

カチャッという鍵音を聞いたような気がして、女は目が覚めた。
彼!? 心が期待にざわめくのを感じて、一瞬苦笑する。 
どうかしている。
こんな夜中に鍵音だなんて、ホントはからだを強ばらせて
息を殺さなければならない。
女は、音を立て無いようにゆっくりとベッドから身を起こして
ベッドサイドに手を伸ばし、身構えた。
ペーパーナイフ代わりに、護身用のガーバーが置いてあった。

闇の向こうをうかがう。 
やはり、人は、いるらしい。足音も無く、気配も希薄だが。 
ドアの前で立ち止まっているのだろうか? 
ないまぜの期待と恐怖が、電流のように全身を走る。
“彼”ならば、このままキッチンに直行して冷蔵庫を開けるだろう。

「猫のようだ」と思ったことがある。 焦がれている、男。 
気紛れで。身勝手で。
こんな時間に、突然、やって来るかもしれない、正体不明の。
ここは徘徊ルートの立ち寄りポイントなのだろうか。
来訪のインターバルは長く、
一緒に過ごした時間は、やり切れ無いほどに短かった。
しかし、どこか現実離れしたその訪いを、自分がこんなに待っているとは。

永遠のような数秒の後、黒ずくめの男が、長身を折り畳むようにして
扉の中に頭を突っ込んでいるのが、冷蔵庫からもれる明かりで
闇に浮かびあがった。
女は安堵に、ひとつ、小さく息をはく。




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