自閉ぎみなのか癖になのか、極端に人と目を合わせることをきらって、
オレが隣でコンビニ弁当を食ってても、オレの全存在を無視した。
俺もたいてい物好きだ。声をかけてみた。
AKIRAは、一瞬驚いたような目で俺を見つめて、静かに無視した。 |
毎日、俺は一方的に話した。
天候の話の事もあったし、食い物の話のこともあったし、女の話もした。
AKIRAは無関心な様子だったが、少しずつ、俺に慣れて来た。
猫が耳だけこっちを向いていることがあるだろ?
あれだ。 |
迷い犬の話をした時だったかな、やつがこっちを見つめて
「イヌ・・・」って声を出したんだ。
「好きか」と聞いたら、こっくりする。
犬が飼いたいって言うより先に、犬が好きだってことさえ
言い出せないような子供だったわけだ。
どっちみち、飼えやしないんだろうけどな。
「おまえ、名前は?」
「・・・AKIRA」 朝露に震える細い細いクモの糸のような声だった。
俺はAKIRAと友達になることにした。 |