08/SEP/2000 UP




  声優・三木眞一郎へのオマージュ  




フォト<三木ちゃま・ヨージ5(レトロ)> フォト<三木ちゃま・ヨージ5(ノート)> フォト<三木ちゃま・ヨージ5(ブルー・ネガ)> フォト<三木ちゃま・ヨージ5(ネオン)>




自閉ぎみなのか癖になのか、極端に人と目を合わせることをきらって、
オレが隣でコンビニ弁当を食ってても、オレの全存在を無視した。 
俺もたいてい物好きだ。声をかけてみた。
AKIRAは、一瞬驚いたような目で俺を見つめて、静かに無視した。

毎日、俺は一方的に話した。
天候の話の事もあったし、食い物の話のこともあったし、女の話もした。
AKIRAは無関心な様子だったが、少しずつ、俺に慣れて来た。
猫が耳だけこっちを向いていることがあるだろ? あれだ。

迷い犬の話をした時だったかな、やつがこっちを見つめて
「イヌ・・・」って声を出したんだ。
「好きか」と聞いたら、こっくりする。
犬が飼いたいって言うより先に、犬が好きだってことさえ
言い出せないような子供だったわけだ。
どっちみち、飼えやしないんだろうけどな。
「おまえ、名前は?」
「・・・AKIRA」 朝露に震える細い細いクモの糸のような声だった。
俺はAKIRAと友達になることにした。


AKIRAは学齢に達していると思うんだが、学校には行っていない。
登校拒否ってやつだろう。 父親は仕事で不在がち。母親は
自閉ぎみの子供をもてあまし、自分の神経も不安定になっているらしい。
ときにはAKIRAに手をあげることもあるようだ。
ありがち、といえばありがちな話。

AKIRAは父親が好きだ。
めったにないが、かまってもらえると嬉しいらしく、俺に報告する。
父親は、なにやら人に付いて回って世話をする仕事らしい。
秘書かなんかだろうか? 
父親の話をしている時、いつもよりも嬉しそうだったから、
「お父さんに笑ってみせたか?」と聞いたら、首を横に振った。
父親は仕事の愚痴をこぼしているだけだったんだ。
自閉ぎみのAKIRAはデッド・エンドってわけだ。

AKIRAは自閉なんかじゃない。繊細すぎて自分が出せないんだろう。
今の世の中にはつくづく難しいタイプだと思う。
俺の中でAKIRAの存在がだんだんと大きくなっていったのは、
どこか自分に似ている部分を感じたせいかもしれない。

AKIRA。おまえ、笑えるんだろう?
俺はお前を幸せにしてやりたいんだよ。
欲しいもの、何かないのか? それともどっか行くか?
「・・・ランド」
消え入るようなつぶやきの、そこがお前の夢の国か。






前のページにもどる 次のページにつづく <声優&アニパロ> TOPにもどる





声優・三木眞一郎へのオマージュ
  
猫熊堂 猫熊堂 nekokumado
 
< 巷に雨の降るごとく >

猫熊堂的世界
無断転載はかたくお断りいたします。 リンクの際には事前にご連絡をお願いいたします。
inserted by FC2 system